経営編
医療機関の経営に関わる話題を、行政書士のコンサルタントがお届けします。
経営レポートその1《東京都の医療法人説明会》(掲載日:2006.8.4)
経営レポートその2《医療経営Q&A》(掲載日:2006.9.10)
経営レポートその3《千葉県、東京都での医療法人新設はお急ぎください!》(掲載日:2006.9.30)
経営レポートその4《医療経済フォーラムジャパン公開シンポジウム》 (掲載日:2006.10.12)
千葉県、東京都での医療法人新設はお急ぎください!
個人診療所を法人化したいとのご相談が続いている中、2006年9月2日開催の《診療所経営セミナー》変わる医療法人制度 にご参加下さった先生から、医療法改正の趣旨がやっと理解できたので、自院も法改正前のこの機会にぜひ法人化をお願いしたい、とのご依頼を頂きました。
医療審議会のスケジュール上、神奈川県内での医療法人の新設は10月6日までに申請書(案)を提出し、審査を受ける必要があります。
ところが、ご依頼を頂いたのが9月15日、それから法人設計をした上で、大量の書類や職員に関する資料等を集めて事業計画を含む申請書(案)を作成して、と考えるとどう考えても日数が足りません。
院長先生と協議の結果、将来を見越しての法人設計をしないまま、強引に現行法の下での法人化を進めるよりも、改正法下でかまわないから将来も考えながら丁寧にやりましょう、との結論に達し、今回の組での医療法人設立を断念されてしまいました。
医療法人の設計から申請書素案作成までには、最低でも1~2ヶ月を要します。
現行法での設立をお考えの院長先生は、できるだけお早めにご相談ください。
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千葉県内での新規設立のご相談は、10月12日で締め切りとさせて頂きますので、ご了承ください。
医療経営Q&A
最近、当社に寄せられたご質問に対するご回答の例です。
【現行の医療法人から出資額限度医療法人への移行について】
またその場合、どのような手続きが必要なのか?
それに対しいわゆる『出資額限度方式』とは、社員の退社時又は法人の解散時の法人残余財産分配として払い戻す金額を、実際に出資した金額の範囲までと定款で定める形式の法人を指します。
定款の残余財産分配方法に関する規定の部分を「出資した額を上限とする」旨に変更することで『出資額限度方式』に移行することは可能です。
手続的には、社員総会決議で変更を決議し、都道府県知事の認可を経ることにより、定款変更は効力が発生します。(登記事項ではありませんので、登記申請は不要です)
以上の手続きを経ることにより、社員の退社時又は法人の解散時に個々の社員に払い戻す額は、法人財産の総額がいくらになっていようとも、実際に出資した額を上限とする持分の割合に応じた額(いわゆる出資額限度方式)となります。
因みに、第5次医療法改正に伴う医療法人制度の改革により、2007年4月1日から2008年3月末までの間に、原則としてすべての医療法人は新法に合わせての定款変更をする必要があり、その際に残余財産については現行のままとするか、出資額限度方式とするかの選択をすることとなります。
また、今般の法改正でも残余財産の帰属先に関する定款規定について、既存の医療法人には当面の間は変更を強制しないという構成となっておりますので、相続税対策や社員の退社による払戻しが莫大な額になる等の特段の理由がない限りは、あえて移行する理由のない場合がほとんどであると考えられています。
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【患者からの未集金について】
督促をしても、内容証明を発送しても支払わない患者はたくさんおり、苦労の割に回収率は上がりません。簡易裁判所の少額訴訟を検討していますが、どこまで効力が発生するのでしょうか。その他に何か良い債権回収方 法はないでしょうか。
かと言って、不払いをそのままにするわけにもいきませんので、まずすべ きことは、負担金を払わない患者を、
①払わない患者(純粋な踏み倒し)
②払えない患者(生活困窮等事情がある)
に分類することです。
貴院にMSW的な方が居られればその方を中心に、居られなければ事務長様 を中心に、患者ひとりずつの状況を確認する必要があります。
その上で、②に該当する患者には行政の福祉窓口を紹介する等により、 生活保護などのきっかけを作ることで、問題がある程度解決することもあります。(ちなみに、福祉事務所は医療機関からの紹介には非常に丁寧に 応対してくれる場合がほとんどです)
残りの①についてがやっかいですが、小額訴訟と雖も訴訟であり、判決 に不服があれば上訴でき、上訴の期間を過ぎたら判決に基づき執行ができるという結果においては、他の訴訟と変わらないことを考えると、回収手 段としてひとつの選択肢であることは確かでしょう。
(訴額は60万円まで、年に10回までしか使えない等の制約はあります)
ただし、患者から始まる口コミの影響や、そこに費やす時間のコスト等 を考えると、あまり訴訟ばかりに時間を使っていられない、というのが医療機関の実情です。
本当に訴訟までを考えるのは、未払い額が大きく、且つ患者に資力があ って悪質な「踏み倒し」の場合に限って考えるべきでしょう。
当社では、未収金が発生してから回収にこだわることよりも、
①そもそも未収金が発生しにくいしくみ
②回収不能になったとしても許容範囲で収まらせるしくみ
③回収にあたる基準と手順(どんな場合に、どんなタイミングで、どんな 方法で等)
といったしくみを作り、全職員で進めることをお勧めしています。
“しくみ作りコンサルティング”の資料のご請求はこちら
東京都の医療法人説明会
2006年8月3日14時から、都庁大会議場にて東京都の医療法人新規設立に関する説明会がありました。
当職もほぼ毎回参加している定例の説明会ですが、医療法人制度改正を間近に控えているせいか、会場は予定の定員(500名)をはるかに上回る満員で、資料が足りない、席が足りない等のハプニングが続出する混雑ぶりでした。
また、会場内には明らかに「不慣れ」な人が多く、やはり現行法が適用されるうちに「駆け込み設立」を考えておいでの医療機関は少なくないようです。
出資持分の問題もさることながら、今回の医療法人制度改正により
①監事の役割が強化される
②決算書類を債権者・社員が閲覧可能になる
③第1種社会福祉事業も附帯事業とすることができる
④2007年4月~2008年3月までの間に(設立したばかりであっても)、残余財産に関する部分以外は新法に合わせて定款変更をしなければいけない(みなし…はありません)
といったいろいろな変更があることも、皆様ご承知なのでしょうか?
今から現行法下での医療法人設立をお考えの先生には、法人化を単なる税務上だけの問題でとらえるのではなく、医療機関経営の根幹に関わる問題としてご検討されることをお勧めします。