人材編
医療機関で発生する問題などのコンサル事例を看護師のコンサルタントがお届けします
人材レポートその1(掲載日:2006.7.29)
人材レポートその1
診療所経営において何の障害もなく順調に進んでいるケースというのは意外に少ないものです。
なかでも『ヒトの問題』に頭をかかえる院長先生は多いようです。病院など大きな組織であれば、そのスタッフの直属の上司に対処が委ねられるものですが、診療所の場合、「診療に専念したいのに...」という気持ちを抑えながら院長自らその対処に追われ、“どう対処してよいのかわからない”“ゴタゴタが絶えなくて面倒くさい”などというのが実情ではないでしょうか。
こんな経験ありませんか?
◎スタッフ同士で仲が悪くて困る
◎忙しくなると業務が雑である
◎ある日突然、事務スタッフ全員が辞表を持ってきた 等々...
これら1つ1つの事例のどれをみても出てくる結果は共通しています。それは全て来院してくれる患者様に迷惑がかかっていることです。一度迷惑を受けたと感じた患者様は、そのクリニックから確実に足が遠のきます。なぜなら同じような診療所はいくらでも存在するのですから、迷惑を受けず気持ちよく診療を受けたいという気持ちを誰でも持っているからです。そしてそれは診療所経営に直結する結果となることは明らかです。
その対処として問題のあるスタッフに辞めてもらう、改善して欲しいと説教をする、給与を上げて留まってもらう等々、“表面的にいい状態にするだけ”にとどまっていることがほとんどです。しかし、それでは本当の意味での解決にはなっていないのです。
そうです、同じことがまた繰り返されます。
表面的な対処ではなく繰り返されないためには、全員が院長先生と同じ方向を向いているかにかかっています。「みんなわかっているだろう」と思っていても、実は何もわかっていないということが多いのです。
私の看護師としての現場経験やその後のコンサルタントや産業カウンセラーとしての経験から導き出された結論は、
診療所経営で一番大事なことは、他ならぬ院長先生の思いを実現し、それを継続させることです。しかし、現場にその思いは伝わっていない、向かっている先がわかっていないのです。
私を含め専門職というのは、概して個人の能力開発や自己啓発には積極的で目標がはっきりしていることに意欲が湧きます。なぜなら患者さんが良い状態になることを目指して治療にあたっていますから。
だから診療所がどういう方向や目標に向かっているのかを掲げることにより、各々がそれに向けて自己実現させていくのです。
先生の思いを明確にし、それを伝えていますか?
いまさらそんなことは恥ずかしくてできないとお思いですか?
それではヒトの問題からは開放されません。同じことが繰り返され、その場しのぎの解決しかできないのです。
全ては院長先生のビジョンから始まります!
私たちはカウンセリングやコーチングの手法を使い、まず院長先生にお話を伺いながら、院長先生の描くビジョンを明確にしていただきます。それを院長先生からスタッフ全員にお話していただきます。そして定期的に私たちが主体になり個別面談や意識調査を実施して、院長先生の思いを再確認してもらいながら、各自が自己をふりかえるという考える機会を与えます。それは日々の業務に流されてしまうことなく、与えられたことをやるだけではなく、院長先生のビジョン達成に向けて主体的に考えていただく訓練になるからです。
面談や意識調査により、見えていなかった本質的な問題が見えてきます。
次回は問題解決の糸口を見つけていただくために具体的な事例をご紹介します。